エンディングノートから「想いをカタチ」に
お葬式の打ち合わせ時に拝見させていただいた一冊のノート。
そのノートには故人が闘病生活の中で「お葬式の希望」を記されていました。
最後の力を振り絞って記されたことは、その筆跡をみてもわかります。
独自のエンディングノートです。
ご家族は書き記されたエンディングノートの要点を時間をかけてまとめられました。
故人の「お葬式の希望」は明確です。
・宗教色のないお葬式
・音楽葬
・クラシック音楽
・バレエ
・想い出の写真を飾る
・華麗な花
・お焼香でなく献花
故人の「想いをカタチ」にした葬儀スタイルは音楽葬です。
お葬式のコンセプトは、ご家族と話し合い「故人をプリマ・バレリーナとしてお見送り」です。
献奏(献曲)はブラームスの「ホルントリオ」です。
この曲自体は大変有名でよく演奏されますが、第3楽章がブラームスの母親が亡くなった際に書かれた「葬送の曲」であることはあまり知られていません。
ホルン三重奏曲が完成したのと同時に母親が亡くなったため、ブラームスは当初でき上がっていた第3楽章を差し替え現在のような形にしました。
このように完成後に一つの楽章を丸々差し替えることは音楽史上まれなことです。
全楽章の中でもこの楽章だけが異質です。
ブラームスがこの曲を単独で発表せず、あえてホルン三重奏曲の中に入れた意味は計り知れません。
「標題音楽」を好まなかったブラームスがこのようなストーリー性のある音楽を書いたことも異例のことです。
また、第3楽章の主題にはドイツの古いコラール「愛する神の導きにまかすもの」が用いられ、より重厚な対位法で書かれています。
これらのことは母への強い想いの表れであると言えます。
お葬式当日に決定したことですが、弔電拝読後に「亡き王女のためのパヴァーヌ」を献奏させていただきました。
多くの哀悼のお言葉の中から、ご家族に拝読のご依頼をうけた弔電の文章に
「レッスン中のその美しい立ち振舞いはバレリーナのかがみでした」
「優雅に踊っている姿だけが心に浮かびます」
この一文を受けての献奏でした。
想い出の曲は「美しき青きドナウ」です。
バレエの発表会時の曲とのことでした。
「美しく青きドナウ」は、ヨハン・シュトラウス2世によって1867年に作曲されたワルツです。
ヨハン・シュトラウス2世(Johann Strauß II/1825-1899)は、19世紀におけるオーストリアのウィーンで活躍した作曲家・ヴァイオリニスト。
生涯の多くをワルツの作曲に捧げ、「ワルツ王」と評されています。
「オーストリア第二の国歌」、「シュトラウスの最高傑作」と讃えられています。
カルテットによる演奏です。
カルテットでの「美しく青きドナウ」の演奏中には、式段中央のスクリーンで故人の踊る姿が映し出されます。
故人が書き記したエンディングノートから、ご家族が故人の「想いをカタチ」にしたお葬式でした。
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